Interview from Plakk Magazine(Estonian Black Metal Zine)

エストニアのファンジンPlakk Magazineからインタビューを受けました。
製作元の了解を得たうえで、日本語訳、英語訳を掲載しています。
(日本語訳は某B!誌風にアレンジしてみました)

1) Yvonxheに関する情報はほとんどないので、バンドのヒストリーについて聞かせてくれませんか?これはスタジオだけのプロジェクトなのですか?それともライブも同じように行っているのですか?

Diezine;
YVONXHEに興味を持ってくれてありがとう。
YVONXHEはDiezine(scream)とShit-cho(Guitars)の2人で立ち上げたブラックメタルプロジェクトで、これまでにデモEP1枚(自主製作)とフルレングス1枚(Zero Dimensional Recordsからリリース)した。デモEPと同じ内容のカセットテープがタイのHellhouse666 Productionsからリリースされることも決定している。(※既にリリース済み)
俺たちは10年以上前からの知り合いで、何度か80'sスラッシュメタルのカバーを一緒に演奏したりはしたが、オリジナル音源を作った事はなかった。だが1年程前、ふとしたきっかけでShit-Choの作ったギターリフに俺がスクリームを合わせた瞬間、化学反応が起こったのさ。お互い、国内の音楽シーンや社会問題にフラストレーションが溜まっていた時期でもあり、自分たちの音楽をシーンに提示したくなった。それからすぐに十数曲のデモソングを書き上げ、その中から4曲を選んで、最初のデモEPをリリースした。
YVONXHEがライブをする予定は無いが、絶対にやらないという訳ではない。積極的にやらないという事だ。

2) あなたは既に短いEPアルバムをリリースしていて、フルアルバムの予定もあるそうですが(あるいは既にリリースされているかもしれない)、EPとアルバムにおける違いはどのようなことですか?

Diezine;
デモ音源は初期衝動で作られたもので、フルレングスは色々な改善を加えた。その点が違う。
俺達は録音・ミックス・マスタリングの全てを自分達でやろうとしていたが、デモを作る段階ではあまりそういった経験が無かった。従って、技術的な問題があって、思った通りのプロダクションを得られなかった。フルレングスではその点は若干改善されている。
また、フルレングスも多くの候補曲から、アルバムとして統一感が保てるよう注意しながら13曲を選んだ。EP収録の曲も再録している。

Shit-Cho:
方向性自体は、デモもフルレングスも変わらないよ。フルレングスで音質面での成長が認められたら嬉しいけど、ハイファイな音を求めている訳じゃないんだ。僕達は音質至上主義じゃないしね。その辺りの調整はDiezineに任せているよ。彼は色々なジャンルの音楽を聴くから、バランス感覚に優れているんだ。

3) バンドの歌詞におけるテーマは何ですか?音楽や歌詞を書く事においてどのようなところからインスピレーションを得ていますか?

Shit-Cho;
僕は憎しみと軽蔑、そして悲しみを曲にしているんだ。
「どうして世の中の人々はマスコミの流す情報を世界の全てと信じてしまうのだろう」とか、「ありきたりの人生論を崇高な思想のように説くのだろう」等と色々考えると、まず憎しみが生まれ、次にそれを軽蔑し、最後には悲しみが残るんだ。そういった感情を、オールドスクールなブラックメタルの音で表現したのがYVONXHEなんだ。

Diezine;
俺のスクリームのテーマは「反抗」だ。俺達はブラックメタルだけど、ファンタジーや悪魔崇拝を歌う事は無い。全て感情から湧き上がるものだ。日本においては「神」という概念がキリスト教圏と全く違うので、悪魔崇拝そのものが少ないと思う。


4) 今後の活動予定について教えてください。

Diezine;
今はフルレングスをリリースしたばかりなので、具体的な事は決まっていない。次の構想を協議中だ。
ただ、同じことを続けるつもりはない。次の作品で表現すべきメッセージや哲学は、多くの時間をかけて作っていきたい。今でも大量のデモ曲はあるが、より高い次元に進む為に多くがボツになるだろう。次の作品も、またデモEPのような形でリリースする事になるだろう。

Shit-Cho:
2人の音楽に対する姿勢は共通している部分もあるし、異なる部分もあるんだ。人間だから当然だけどね。Diezineは色々な音楽を聴くけど、僕はもう少し限定的だ。Diezineは改革派で、僕は保守派とも言える。YVONXHEはどちらの方向にも向かい得るんだ。ただ、根本的にはブラックメタルを軸にしていくつもりだよ。「今のところは」ね!

5) 今の日本のブラックメタルシーンについてですが、最も尊敬しているバンド、レーベル、マガジンは何ですか?インナーサークルのような集団はありますか?またそれらの関係性はどのようになっているのでしょうか?

Diezine;
特別リスペクトしているバンドはいないが、SIGHはやはり凄いと思う。他はあまり知らない。俺はブラックメタルよりもハードコアを聴いている方が多いんだ。クラストやD-BEAT等だ。
レーベルは、俺達のリリースもサポートしてくれたZero Dimensionalが日本のシーンに貢献していると思う。国内バンドをサポートする姿勢は他に類を見ないものだ。
ファンジンとして定期的に発行されているものは無いが、リスナーのWEB BLOGで影響力の大きいものがあるな。
インナーサークルか・・・ちょっと違うかもしれないけど、アンダーグラウンドで特殊な趣味の人が集まっているイリーガルな秘密クラブのようなものはある。でも、それらはブラックメタルとは直接関係はない。リスナーはそれぞれ勝手に情報を発信しているし、少し前とは違って情報は全てインターネットで共有されている。個人間の繋がりは非常に希薄で流動的になっている。ただ、誰しもが新しい情報を求めているし、個人個人の探究心は非常に強いと感じる。俺達のデモEPは日本より先に海外ディストロに置かれたが、一切国内で宣伝していないにも関わらず、わざわざ海外ディストロから購入してくれた日本人もいたようだ。

Shit-Cho;
日本のバンドだと、例えばABIGAILはスラッシュメタルとブラックメタルの過渡期のサウンドでかっこいい。CATAPLEXYは音楽的にもプロダクション的にもハイレベルなピュア・ブラックだよ。他にも、激しいものからメロディアスなものまで色々なバンドがあるね。
レーベルとしては、Zero Dimensionalの我々に対するサポートに感動しているよ。こういったコミュニティが活発化すれば、日本のシーンはもっと良いものになると思う。
ブラックメタルのファンジンはあるようだけど、購入した事は無いなあ。興味はあるけどね。今はインターネットでの情報収集がメインになっているよ。
インナーサークルのような象徴的な集団は、少なくとも僕の知る限りでは無いね。そもそも日本のブラックメタルシーン自体がそんなに大きいものではないので、シーンそのものが一つのサークルとなっているような感覚があるよ。

6) ブラックメタルバンド達にとってリハーサルやレコーディング、ライブ環境などはどうですか?

Diezine;
ここ東京ではスタジオ等の環境はかなり良いと思っている。ただ地方に行くとなかなかスタジオも機材が揃っておらず不自由することはある。しかしブラックメタルなんて高価な機材を必要としないし全く問題無いね。

Shit-Cho;
所謂DTMで音源を作っている人も多いんだ。PCとDTMソフトと楽器があれば、音源は出来てしまう。テクノロジーが発展して、これまでは住んでいる場所や生活スタイルの制約で音源を作る事が出来なかった人達にもチャンスが出てきたという点は、とても喜ばしいよ。

7) エクストリームミュージックのバンドたちは社会でどのように受け入れらているのでしょうか?貴方の国のメタルヘッズ達の生活について聞かせてください。

Diezine;
メタル人口は少ない訳ではないが、アンダーグランドなメタル、特にブラックメタルとなると話は別だ。ブラックメタル人口はかなり少ないし、METALLICAやIRON MAIDENのように認知度も高くないから、聴いていると知られたら変人扱いされるよ。まぁ実際変人は多いけど・・・。
メタルキッズはピンからキリまであるけど、アンダーグラウンドになればなるほど気合が入っている人間が多くなる。
あと日本ではタトューはかなり反社会的なものとして扱いを受ける。公の仕事には就く事ができないし、公共施設に入る事を拒否されることもあるな。

Shit-Cho:
メタルファンの多くは、インターネット環境をフルに利用していると思う。バンドの評判を調べるのは勿論だけど、CDを買うのも、インターネットが無ければ難しいよ。路上店舗がどんどん閉店して、ランニングコストの安いネットショップに転身しているんだ。裏を返せば、昔は東京や大阪でしか入手できなかったアンダーグラウンドシーンの音源が、日本全国どこにいても入手できるという事でもあるけどね。どっちが良いのかは、わからないな。

8) 日本は現代技術の最先端をいく国として知られていますが、古くからの文化が残っている国としても知られています。あなたの生活の中でそれらはどれくらい残っているものなのでしょうか?またそれらは今日ではどれほどの重要性をもって人々の中に生きているのでしょうか?

Diezine;
今日の日本は経済大国、GDP第三位という繁栄を遂げているが、それは物質面の豊かさでしかない。古くから伝わる風習が地域の中にはあって、今でもごく僅かではあるが人々の生活の中に残っている。日常生活のなかで神道は生きているし、子供達の遊びや祭りごとの中で万神という概念は普通のものとして受け入れられている。
例えば、日本中に残っている「お盆」という時期だ。みんなで「盆踊り」を踊ったりするので、一見単なるお祭りのシーズンのように見えるが、この時期は先祖の霊魂が現世に帰ってくると信じられていて、多くの人が故郷に帰り、先祖の墓参りをするシーズンでもある。
その一方、物質面の豊かさにより傲慢になってしまった人々は「畏れる」という感覚を無くしてしまった。神や鬼を畏れることを忘れ、自分の身の程を知り規律を正すことも忘れ、かつての日本人にあった良識のようなものは、アメリカナイズドされた資本主義に破壊されてしまったのだ。人々は無限に欲しがり、そして満たされない。経済的発展は敗戦の自信喪失を癒したが意識を負け犬に変えてしまった。アメリカの言いなりの政府だってそうさ。俺はそういったことに怒りを感じているし、それはYVONXHEの音楽性に反映させていきたいと思っている。ジャケットの地獄絵図も、ただの日本アピールと思われるかもしれないが、そうじゃない。日本人がかつて畏れ、敬っていたものの一つとして表現している。

Shit-Cho;
日本では、色々なものに神が宿っているという信仰が昔からあるんだ。アミニズムの一種だよね。ブラックメタルの本場である北欧の古代神話と似ている部分もある。でも、もっと穏やかなんだ。絶対的な神も、絶対的な悪魔もいない。日本の伝統的な悪魔(Daemons)は「妖怪」(Yoh-Kai)と呼ばれていて、それらは神様でもあるんだ。人類の味方=神、敵=悪魔 ではなくて、いろんな神様がいて、中には人に迷惑をかけるものもいる、という感じだと思う。
現代では、そういう事を常に意識している人は少ないけれども、深層心理では残っている筈だよ。今でも親が子供に「裸でトイレに入ると、トイレの神様に怒られるぞ!」とか「お米には神様が宿っているから、ごはんを残したらバチがあたるよ」と諭しているからね。
そういった緩やかな信仰が、西洋化された近代文明の中にもあるんだ。日本人と欧米人の思考回路が異なるのは、絶対的な判断基準(=神)が有るか無いかが大きな理由の一つだと思うよ。そういう意味では、今でも日本独自の文化は人々の中に残っているんじゃないかな。

俺たちのバンドと、この国の文化に興味を持ってくれたことに感謝する。
いつか君の国にも行ける時がくればいいと思っているよ。
ありがとう。

ファーストライブの様子
Priest I.Q(Ba),Jirolian(Dr),Shit-Cho(Gt)
デモEPのカセットバージョン
タイのHellhouse666からリリースされた。
日本のブラックメタルファンジン
"End of a Journey"


(翻訳協力: TxDx from ghostlate)

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